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県立広島大学 生物資源科学部の青栁充先生にインタビューしました

青栁充教授の写真
青栁 充

県立広島大学 生物資源科学部 准教授

プロフィール

県立広島大学庄原キャンパスで、植物由来の循環型炭素資源「リグノセルロース」を中心に、化学的手法での有効活用を研究。セルロースやリグニンなどの構造解析・素材開発を行い、環境循環や地域資源の利活用にも取り組んでいます。

青栁教授が環境・素材化学の研究を行おうと思ったきっかけ

インタビュアー
青栁教授が環境・素材化学の研究を行おうと思ったきっかけや理由を教えてください

最初のきっかけは、高校の授業で聞いた先生のお話しでした。

化学を暗記だと感じて意味が分からなくなり、成績が伸び悩んでいるときでした。当時担任であった化学の先生が気軽な感じで「今日学んだナトリウムイオンと細胞のナトリウムチャネルは関係がある。天文学の星の色と炎色反応は関係がある。相互作用は物理の現象。みんなかかわりあう中で、人間が理解できてかつ触れられるのは化学だけかもしれない。」という話をされました。

科目を超えて考えたことがなかったので、とても驚きました。そこから人体や食料、衣食住、世の中をよくすることに貢献する物質についての学びに興味を持ち、素材の化学を学ぶ道を選びました。

環境問題とは、人間と化学物質のとのかかわりそのものであると考えているので、素材の化学を研究することとほとんど同じ意味でした。特別なことではなく、もしかすると人類発生時からかかわる普遍的ことであり、素材化学であってこそ貢献できることがあると考えています。

素材化学が人類の役に立ち、環境問題にも寄与できるという考え方は世界でも評価されていて、実際、2025年のノーベル化学賞受賞がそれを示しました。

『カスケード型リサイクル』実用化における課題と可能性

インタビュアー
教授が提唱される『カスケード型リサイクル』は、従来の水平リサイクルとは異なる画期的な概念ですが、実用化にはどのような課題があり、どの分野から実用化が始まると予想されますか?

カスケード(多段階滝型)リサイクルは、モノが本来持っている「多面的な機能」を順番に発現させていく使い方です。起点となる物質の化学結合や複合体の組成を、切断したり組み替えたりしながら「次」に使える用途に活用して、最後にCO2として排出するという考え方です。

農林業や畜産業などでは、このような利用をよく見かけます。イネのワラは農産物としてはコメを支えるもの、枯れたあと/刈り取ったあとはエサや燃料といった直接的な利用のほかに、畜産の敷きわらなどに使い糞尿と合わせて発酵させ農作業に使う、非常に時間と手間をかけて一つの資源を様々な用途で「そのものが持っている価値を」「多面的に」「使い切る」という考え方です。

同時に「資源を戻さないと、なくなっていく一方」の仕組みでもあり「資源の維持」が求められます。水平リサイクルはPETボトルや紙のように「おなじモノを、同じ用途のモノに戻す」という考えで、実社会で行われていますが、実際には劣化や汚染、未回収によって元の状態に戻すことは困難で「要求性能を満たすために」外部からエネルギーや別の資源(コスト)を追加する必要があります。

これらの多大な努力を続けたうえで「一つの材料に、単一の機能を付与する」という設計を見直すことが求められる時代が来ると思います。性能を出すためには必要なことですが、限られた資源を活用するためには「複数の機能」をもたせ、あるいは見出して「順番に引き出す」材料設計が必要になると考えられます。自然にはその仕組みがあり、それが教科書になると思います。

始まる分野は有機化合物がかかわる分野で、特に天然物を用いている材料科学の分野である衣料や紙などの繊維ではないでしょうか?そこから、海洋プラスチック汚染などの問題の解決にも近づくのではないかと思います。

『カスケード型リサイクル』システムの役割

インタビュアー
現在の大量生産・大量消費・大量廃棄社会から真の循環型社会への転換において、植物由来の『カスケード型リサイクル』システムはどのような役割を果たし、従来の廃棄物処理システムをどう改善できるのでしょうか?

大量生産・大量消費・大量廃棄社会を支えているのは、現代の社会においては地中から大量に得られ「安価」で取引されている扱いやすい液体の石油です。世界での使用量は膨大で、プラスチック生産量だけでも年間4億5千万トンを超えます。

これらの全てを生産、加工、運搬に多くの時間と比較的高いコスト、多くのエネルギーを要する植物由来材料で置き換えることは困難です。そのため得られる材料の機能面から置き換えがはじまり、共存する形で進むと考えています。

その材料は「安価なもの」ではなく、付加価値が高い医薬品や電子材料、高性能プラスチックなどになると考えています。これらの材料はカスケード型リサイクルを前提としますので「次に使い道がある」ため、使用後はPETのように廃棄物ではなく「資源」として扱われます。

廃棄物とは、製造時に材料に付与された価値とエネルギーが失われたものであると考えることができます。「次に使う価値」を付与する材料設計によって、現在の社会で行われている分別・再利用が進み「わけると資源」がより浸透し拡がることが期待されます。

その原料が特定の地域で取れたもので地産地消が進むことによって、これらの「再利用資源」にも地域性という新しい価値が付与されるかもしれません。

理念の実現に求められる教育

インタビュアー
自然から借りた炭素を自然の循環に戻すという教授の理念を次世代に伝承していく上で、どのような環境教育が重要でしょうか?

地球上の大気圏を循環する炭素資源を自然の循環から借りて使い、再び循環の流れに戻すことは、私たちが呼吸や食事、排泄をするなどの日常的な生物活動そのものであり、私たちの肉体は循環炭素で構成されているといえます。

大気中の二酸化炭素を固定化できるのは、陸上では植物だけです。植物が光合成をおこない大気中に拡散した二酸化炭素と水蒸気から地球外エネルギー(太陽光)を用いて、ブドウ糖を作ることから始まります。農産物も大きな樹木も、足元の名もない雑草も同じ機能を持っています。これらの活動があって初めて、人類は地表で生存することができています。

食物連鎖によって、これらの循環炭素を取り込んで私たちは生きています。私たちの文化的な生活を支える材料、特に有機化合物を使うときに、同様にその「原料」に注目しています。植物由来であれば、使用後に(多段階で使い切った後に)燃焼によって熱エネルギーを得ると同時に二酸化炭素と水蒸気に変換され、炭素の循環系に戻ります。

体内を通らないけれど、人間「社会」の中で機能を発揮させエネルギーを消費しながら通り抜け、自然の生態系の炭素循環に戻すことができます。このように生物で学ぶことや生物としての自分がもつ生活実感を軸として、生活の中で活躍している有機化合物に注目することで学んでいけるのではないかと考えています。

読者へのメッセージ

インタビュアー
最後に環境・素材化学の分野を志す学生や、本記事の読者にメッセージをください

環境の問題と素材化学を学ぶことは、ほとんど同じ意味ではないかと冒頭に書きました。量子化学の発展によって物質とエネルギーは同じものであるとわかっているので、エネルギーについても常に考えることになります。

化学は暗記の勉強ではなく、素材を構成する原子や分子がある状況で生み出す性質を機能として取り出したり、特徴として判別して新しいものやそれらがかかわる枠組みを生み出す学問領域です。この考え方を他の学問と融合すると、循環炭素を生み出し超長期にわたって保持し続ける植物を化学的に眺めることができ、素材が特有の物理現象を生み出す過程を説明でき、制御することができます。

過去の人類は、様々な新しい素材から道具を作って文明を躍進させてきました。そしてその文明を支えてきたのは循環炭素が集積した森林でした。現在の環境問題を解決するには、古くから人類が選択してきた二つの要素を融合させた取り組みが必要だと考えています。

その鍵となるのが循環炭素を用いた素材化学だと考えています。環境・化学・生物・物理・社会・・・といった枠組みをこえて重なった、未知なる融合領域を切り拓いてみませんか?石油に支えられた100年の次は、「再び」循環炭素が支える、人類が生存する環境を守りながら発展する素材化学の時代ではないかと考えています。

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